適法なダブルワークについて考えてみました

<なぜダブルワークをしたいのか?>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないといいます。会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないというのです。

あるいは、以前は残業が多くて残業手当も多かったのに、会社が残業の削減に取り組んだので、収入が減った分だけ他の仕事をしたいという人もいます。

中には、今の仕事だけでは力を持て余しているので別の仕事もしてみたい人、本業の他に家業を手伝っているという人もいますが、こういうのは少数派です。

<なぜダブルワーク禁止なのか?>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にもそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

<ダブルワーク禁止の有効性>

それでは就業規則でダブルワークを禁止したり、社員に「ダブルワークしません」という念書を出してもらった場合には有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則としてこうした就業規則や念書には効力がないということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて定めたとしても、すべてが有効になるわけではありません。

実際に有効とされるためには次の2つの条件をクリアする必要があります。

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

これらは、労働契約法15条と16条に規定されています。

<ダブルワークについての労働基準法の規定>

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。〔労働基準法38条1項〕

これは、ピンと来ない規定ですが、1日8時間あるいは週40時間(44時間)を超えて働いた場合の割増賃金や、法定休日出勤の割増賃金は、ダブルワークの場合には、複数の会社で働いた日数や時間を合計したうえで賃金の計算をして支給しなければならないということです。

別の会社で働いている人を採用してダブルワークになったら、別の会社と連絡を取り合って、出勤日や勤務時間数を確認したうえで、残業代の計算をしなさいということです。

そもそも、その「別の会社」に連絡した時点で、「別の会社」でダブルワークが問題視されて、大変なことになるかもしれません。

この条文は、「だからダブルワークでも1日8時間、週40時間以内で収まるように働きなさい」といっているのでしょう。

<雇用保険の不思議>

雇用保険は、ダブルワークでも両方の会社で入ることはできません。メインの仕事をしている会社で入ります。

A社で週25時間働いて月収13万円、B社で週20時間働いて月収10万円なら、A社のほうで雇用保険に入ります。

このとき、B社の人事手続き担当者は「この人は週20時間勤務だから雇用保険に入る」と思うでしょう。ところが、ハローワークに手続きの書類を持っていくと「この人はA社の雇用保険に入ったままで、離職の手続きができていませんから、B社で雇用保険に入れません。手続きを急ぐよう催促しておきますね」という話になるのです。

ところが、ハローワークからA社に連絡すると「いえいえ退職なんかしません」という返事が来るのです。

結局、ハローワークはB社に対して雇用保険に入れない理由を説明することになります。

しかし、月収13万円と10万円の合計23万円で生活している人にとって、どちらか一方の仕事を失うことは、まぎれもなく失業です。それなのに、雇用保険の給付が受けられないというのは不合理です。

ここは、法改正をしていただきたいところです。

<社会保険の不思議>

社会保険の加入基準が平成28年10月に変わります。

会社の規模が大きいと、今までとは違う基準で社会保険に加入することとなります。A社で週25時間働いて月収13万円、B社で週20時間働いて月収10万円なら、今までは、どちらの会社でも社会保険に加入しなかったのに、基準の変更によって、A社とB社の両方で社会保険に加入するということもありえます。

この場合には、A社とB社で話し合って、手続きをする年金事務所を決めたり、保険料を計算したりということが必要になります。

しかし、このような面倒なことは、A社もB社もしたくありません。結局、ダブルワークをしている人は、どちらかの会社を退職することになるのでしょう。

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、本来の目的と違うアルバイトなどの活動は制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

怖いのは、この資格外活動許可違反というのが労働基準法違反ではなくて出入国管理法違反だということです。摘発されれば、留学生は強制送還、雇っている側は営業停止処分もありうるので十分に注意しましょう。

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解決社労士 柳田 恵一
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