学生アルバイトの労働環境

経済格差が大きく広がってきた現在、学生でも働いて学費を稼がなければならない人が増えていると思います。

そんな状況の中、学生がアルバイトをする際、会社の労働基準法違反により不利益を被ったり、学業に支障をきたしたりするなど、

「社会問題」として注目され始めています。

そこで、厚生労働省では、「学生アルバイト」の労働環境や学業への影響等を把握するために、「学生に対するアルバイトに関する意識調査」を平成27年度に行いました。

具体的には、

大学生等(大学生、大学院生、短大生、専門学校生)の意識等調査(平成27年8月27日~9月7日)の結果を、平成27年11月9日に公表し、

高校生の意識等調査(平成27年12月~平成28年2月)の結果を、平成28年5月18日に公表しました。

この調査の結果で注目すべきポイントがいくつかありました。

大学生等の58.7%、高校生の60.0%の調査対象者が「労働条件通知書等を交付されていない」と回答し、

「口頭でも具体的な説明を受けた記憶がない」と回答した大学生等が19.1%、高校生が18.0%ありました。

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実は、労働基準法第15条には、使用者は労働契約の締結に際し、労働者に対して、以下の6項目については「書面により明示しなければならない」とされています。

1)契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること、期間の定め無しならその旨)

2)期間の定めがある契約の更新についてのきまり(更新の有無、更新する場合の判断基準など)

3)どこでどんな仕事をするのか(就業の場所、従事する業務)

4)仕事の時間や休みについて(始業と終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交代制勤務のローテーション等)

5)賃金はどのように支払われるのか(賃金の決定、計算と支払方法、締切と支払の時期)

6)辞めるときはどのような決まりがあるのか(退職に関すること、解雇事由を含む)

約6割のアルバイト先では、これを行っていないということになります。

さらに、上記以外の労働契約の内容についても、使用者と労働者は「できる限り書面で確認」する必要があると、労働契約法第4条第2項で定められていますが、

これも行われていないと推測されます。

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また、意識調査の結果から、労働条件等で「何らかのトラブル」があったと回答したのは、大学生等では48.2%、高校生では32.6%でした。

トラブルの中では、大学生等も高校生も「シフトに関するもの」が多いのですが、以下のようなトラブルがあったことが、この調査で回答されています。

> 1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった

> 働いた時間分の全てがアルバイト代として計算されていない(タイムカード打刻後に働かされたなど)

> 準備や片付けの時間に賃金が払われなかった

> 時間外労働、休日労働、深夜労働について、割増賃金が支払われなかった

> 満18歳未満で原則禁止されている深夜労働、休日労働させられた

これらは、労働基準関係法令に違反しているおそれがあります。

それ以外にも

> 採用時に合意した以上のシフトを入れられた

> 採用時に合意した仕事以外の仕事をさせられた

> 一方的に急なシフト変更を命じられた

> 一方的にシフトを削られた

> 給与明細書がもらえなかった

などのトラブルがあったという回答もありました。

当然のことですが、学生にとって学業を修めることは重要なことです。

しかし、使用者が「学生」をアルバイトとして雇っているということを知りながら、試験の準備期間や試験期間に休みを与えなかったり、シフトを入れたり変更したりすることは、使用者としての配慮に欠けることだと思います。

もちろん、会社としては悪意ではなく、法律を知らなかったり、アルバイトということでうっかり手続きを省略してしまったりしていることもあると思います。

ですから、学生のみなさんは、アルバイトをするに当たって、

「労働条件をしっかり確認」することが大切だと思います。

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学生アルバイトも、「会社の指揮命令下で働いて賃金を支払われている」わけですから、他の労働者と同じように、

1)賃金(バイト代)は、毎月、決められた日に全額支払われます

2)残業手当(割増賃金)は支払われます

3)条件を満たせば(6カ月以上継続、8割以上の出勤など)有給休暇が取れます

4)仕事中にケガをすれば労災保険が使えます

5)会社都合の勝手な解雇はできません(社会の常識にかなう納得できる合理的な理由が必要)

6)都道府県で決められた最低賃金以上の時給の賃金がもらえます

7)もし辞めさせてもらえないようなことがあっても、あらかじめ契約期間が定められていないときは、少なくとも2週間前までに退職の申し出をすれば、法律上はいつでも辞めることができます。
(ただし、就業規則で退職手続が定められている場合、その内容が合理的であれば従う必要があります。また、契約期間に定めのある労働契約を結んでいる場合、途中で退職することは、やむを得ない事由がある場合を除き、原則としてできません)

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多くの学生のみなさんは、いずれ何処かの組織で働くことになると思います。

ですから、労働関係の最低限のルールは知っておいたほうがよいと思います。(最初から社長になるとしても)

会社にとって「人を大切にする会社」は、長期的に、成長・発展し、社会の信頼性が高まっていくことはわかっていると思いますし、

短期的にも、労働環境をより良くしていくことは会社の業績向上に繋がると考えている会社は多いと思います。

ですから会社の規模に関係なく、労働環境の良い会社や、改善する意欲のある会社は沢山あるので、

今後それをしっかり見極めるためにも、

アルバイトをするにあたって、(学業を疎かにしないことはもちろんですが)

「社会人としての基礎知識」や「会社を見る眼識」を、身に付けるよう努めてみたら如何でしょうか。

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坂部 雅人

坂部 雅人

代表 社会保険労務士さかべ社会保険労務士事務所
1959年、埼玉県生まれ 北海道大学で、細菌の酵素について研究した理系人間です。 日本たばこ産業株式会社(JT)で、研究職、管理職を長く経験した後、 社会保険労務士になった「へんてこ社労士」です。 「人」と「人」の問題を解決するには、それぞれのお話にしっかり耳を傾けることが、まず第一歩だと考えています。