ブラック企業名の公表

テレビや新聞等で「違法な長時間労働をしている企業の公表」についてのニュースがありました。

その内容は、

厚生労働省の千葉労働局が、平成28年5月19日、千葉市内の「棚卸サービスの企業」に対し、

「違法な長時間労働を複数の事業場で行っていたこと」について「是正指導」し、その「企業名等を公表」したということです。

この企業では、1カ月当たり100時間を超える時間外や休日労働が行われていたことが、4カ所の事業場(A・B・C・D)で確認され、

A事業場では18名が100時間を超える時間外労働で、最長約182時間の労働者がいました。

また、B事業場では14名が該当し最長約175時間、C事業場では16名で最長約118時間、

さらにD事業場は15名で最長約197時間にもなった労働者もいました。

非常に過酷な職場環境だったことが察せられます。

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でも、この事件がなぜニュースで取り上げられたのでしょうか?

これまでは、企業が長時間労働で法律に違反した場合、

労働基準監督署が「是正を指導、勧告」し、それでも「従わない悪質な企業に限って書類送検」して、「社名を原則公表」していました。

しかし、今回の事件については、「是正指導(法的拘束力が無い行政指導)の段階」で、初めて「企業名を公表」したのです。

その背景には、平成27年5月15日に厚生労働省で行われた「臨時全国労働局長会議」があります。

この会議で、企業の長時間労働の労働基準法違反の防止を徹底し、自主改善を促すために、

都道府県の労働局長が経営トップに対して全社的な早期是正について指導し、その事実を公表する、という方針を明らかにし、

同年5月18日より実施されることになりました。

企業名公表の対象は「社会的に影響力の大きい企業(主に300人を超える大企業等、詳細省略)」で、以下のいずれにも当てはまる事案です。

1)違法な労働時間があったこと

>労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反

>1カ月当たりの時間外・休日労働時間が100時間超え

2)相当数の労働者がいたこと

>1カ所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において「違法な長時間労働」

3)一定期間内に複数の事業場で繰り返し行われたこと

>概ね1年程度の期間に3カ所以上の事業場で「違法な長時間労働」

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今回の企業名の公表により、当該「棚卸サービス企業」の株価は、翌日20日以降、ストップ安まで下落し、その後も株価が低迷しています。

また、インターネット上(SNS等)などでも、社長の個人情報から会社情報まで流れ、風評が広がっています。

さらに、ハローワークでも平成28年3月から、いわゆる「ブラック企業」の求人は受け付けないことになっており、求人が難しくなるかもしれません。

その他にも、社員の損害賠償や個別紛争対応、社員の士気の低下、そして顧客離れ等もあるかもしれません。

このように「企業名の公表」は、顧客、株主、労働者など経営全体に影響が及ぶ可能性があり、情報社会の近年では非常に厳しい制裁だと思います。

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今回の措置は「大きな企業」のみが対象になりますが、それ以外の「中小企業」にとっては他人事だと言っていられないかもしれません。

というのは、

国では「日本再興戦略」の改訂(平成27年6月30日閣議決定)において、「働き過ぎ防止のための取組強化」を重要項目として盛り込んでいます。

そして「過労死等防止対策推進法」(平成26年11月施行)に基づき、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(平成27年7月24日閣議決定)が定められるなど、長時間労働対策を強化しています。

また厚生労働省に「働き方改革推進本部」も平成27年1月に設置しています。

ですから「大企業」だけでなく、企業の9割以上を占める「中小企業」についても、直接的、間接的に徐々に改善を指導していく方向ではないかと思われます。

今後、長時間労働削減に向けて、いろいろな施策を打つ計画があるようですが、

例えば、労働基準局は「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」を平成28年4月1日に公表しています。

それによると、平成27年4月から12月までの間に、

「1カ月当たり100時間を超える残業が行われた疑いのある事業場」あるいは

「長時間労働による過労死などに関する労災請求があった事業場」を対象として、

労働基準監督署による「監督指導」を行われました。

その結果「監督指導」を行った8,530事業場のうち、半数を超える4,790事業場で違法な時間外労働があることが分かり、
それらの事業場に「是正勧告」しています。

この「監督指導」によって、1カ月当たり100時間を超えたのが2,860事業場(59.7%)もあり、

さらに595事業場(12.4%)で、時間外労働が150時間を超えた事例、

120事業場(2.5%)で、時間外労働が200時間を超えた事例、

27事業場(0.6%)で、時間外労働が250時間を超えた事例があったことも分かりました。

このように、企業の規模に関わらず、多くの企業において、かなり「劣悪な労働環境」で働いている労働者がいることが分かります。

厚生労働省では、今後もこのような施策を積極的に行っていくとのことです。

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このように「不適切な労働時間」で労働者を働かせることは、労働者の健康に悪影響があることはもちろんのこと、

企業業績や経営に大きな打撃がある可能性があります。

反対に「適切な労働時間」で労働者に働いてもらうことによって、労働意欲や労働効率などが向上し、経営にとって良いことが沢山あると思います。

近年、特に「中小企業」は人手不足で、どうしても労働時間が増えてしまうのかもしれません。

繁忙な中で、労働時間を減少させることは非常に難しく、

業務の進め方の見直しや効率化を進めるでけでなく、業務の必要性の判断まで求められる場合もあります。

また「経営者」のコンプラライアンスに対する意識改革が最も大切ですが、「労働者」の教育と意識改革も必要かもしれません。

「経営者」が率先して労働環境改善に努めることはもちろんのと、「労働者」と一緒に解決策を考えていくことも大切です。

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例えば、今回「是正指導」を受けた「棚卸サービス企業」では、「再発防止に向けた取組」として、

社長を中心とした「社内プロジェクト」を立ち上げ、外部専門家の助言を得ながら

1)労働時間管理の徹底

2)業務量標準化への取組み

3)業務効率化の推進

そして、その改善状況を随時検証し、必要な対策を講じ、

この実行を担保する体制を構築する。

と報告しています。

「是正指導」される前に、実行しておくべきだったかもしれませんね。

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坂部 雅人

坂部 雅人

代表 社会保険労務士さかべ社会保険労務士事務所
1959年、埼玉県生まれ 北海道大学で、細菌の酵素について研究した理系人間です。 日本たばこ産業株式会社(JT)で、研究職、管理職を長く経験した後、 社会保険労務士になった「へんてこ社労士」です。 「人」と「人」の問題を解決するには、それぞれのお話にしっかり耳を傾けることが、まず第一歩だと考えています。

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