残業80時間で立ち入り調査 対象、300万人に拡大 政府、長時間労働の抑制狙う

少し古い情報ですが、今後も注視すべき事柄であるため取り上げます。

以前、「残業80時間で立ち入り調査 対象、300万人に拡大 政府、長時間労働の抑制狙う」という見出しの記事が、日経新聞1面に大きく出ました。

大事な記事だと思いますので、長いですが、3月24日(木)日経新聞朝刊をそのまま引用します。
ブログ全体も長文になります事、ご容赦ください。

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政府は長時間労働に歯止めをかけるため企業への指導を強める。
1カ月の残業が100時間に達した場合に行う労働基準監督署の立ち入り調査について、基準を月80時間まで引き下げる方向だ。
労働基準法違反があれば是正勧告などの措置をとる。
労働の生産性を高めて長時間労働を減らすことで、子育て中の女性や高齢者が働きやすい環境を整える狙いだ。
ただ目先は企業にとって負担となる可能性もある。

政府が25日に開く一億総活躍国民会議で、長時間労働抑制の具体策として示す。
5月にまとめる「ニッポン一億総活躍プラン」の働き方改革の柱の一つとして盛り込み、年内にも指導を強める。
20万超の事業所が対象になる見通しだ。

立ち入り調査の対象となるのは、80時間を超える残業をしている従業員が1人でも
いると疑われる企業。
実際は労基署の監督官の数が限られるため従業員による通報などを通じて悪質な企業を把握し、重点調査する。

これまでは従業員の残業が月100時間を超えると心臓疾患などのリスクが高まるとの
医学的な根拠に基づき企業を立ち入り調査してきた。
今後は基準を厳しくし、80時間を超える残業があった企業を立ち入り調査の対象とする。
これだけの時間の残業が何カ月も続くと、やはり心臓疾患などにつながるとの見方からだ。

調査の結果、違法な時間外労働や残業代の未払いなどの労働基準法違反が見つかった
場合は是正勧告し、企業に違反行為を改めるよう求める。
違反がなくても勤務時間を極力短くするため労働時間の記録など対策を徹底するよう指導する。

法律違反が見つかり、労基署が是正勧告しても改善しない企業は労基法違反で書類送検する。
2015年には靴の販売店「ABCマート」を運営するエービーシー・マートが書類送検された例がある。

15年の労働力調査によると全国の常勤労働者の数は約5000万人。
このうち100時間超の残業をしている人は少なくとも約110万人いる。
80時間以上の人は約300万人で、今回の指導強化で調査対象となる働き手は2.7倍になる。

各労基署の陣容にもよるが、今後立ち入り調査の件数は増える見通し。
厚労省によると、全国の労基署による14年の定期的な立ち入り調査は12万9881件。
このうち7割で何らかの法違反がみつかった。
最も多かったのが違法残業など労働時間に関する違反だ。

労基法では労働時間を原則1日8時間と定めている。
企業が従業員に残業を命じる場合、労働時間の超過理由を事前に明示した「36協定」を労使で結ばなければならない。
厚生労働省は協定を結んだ場合でも、残業時間は月45時間までにするよう求めている。

ただ「36協定」の特別条項付協定を結べば、月45時間以上の残業は可能だ。
専門家からは「労働時間を際限なく延ばすことができてしまう」との声があがっており、指導を強めることにした。
法改正による規制強化などは見送る。

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この記事をご覧になられて、皆様はどのように感じられましたか?

私は、いよいよ来たなと思いました。
時期や優先順位の問題がありますが、労基署が突然来ても違反だと指摘されないよう準備だけはなさってください。

この記事にはいくつもの重要な論点がありますが、今回は36協定に絞って述べたいと思います。
ややこしくなりますから、法定休日労働がないという前提で述べます。
また、一番大事な論点、「残業自体をどう減らすのか?」は、別の機会にご案内できればと考えています。

一般的な業務(トラック運転業務などを除く)を行っている業種には、政府が決めた告示が適用されてしまいます。
告示では、月45時間・年360時間(1年変形労働を除く)という残業時間数が決められています。
ちなみに、トラック運転者は改善基準告示という別のものが適用され、上記と違い複雑ですが残業時間数の設定は緩やかです。

告示は、法律ではありません。
従いまして、告示を無視して36協定を作成することは、理論的には可能です。
しかし、告示を無視した36協定は、労基署が受理してくれません。
受理されない36協定は有効にはなりません(1分たりとも残業させられない)ので、結果として、告示の時間数を設定せざるを得ません。
ただ、そうはいっても月45時間を超える残業をしなければならない繁忙月も当然ありますから、特別条項というもので、月45時間超の時間数(年間も比例して増加)を設定します。

このような前提が、上記記事にはあります。

さて、特別条項での時間数設定ですが、記事では、月100時間ではなく80時間でも労基署の調査対象とする旨が書かれています。
これまでは、月100時間の特別条項の36協定は、労基署には目立つと言われてきました。
これからは、月80時間が目立つのでしょう。

私は新規でご相談いただいた会社様の36協定をたくさん見てきましたが、労基署から
目立たないようにしている、言い換えれば、自社の残業実態より少ない時間数設定にしている36協定が非常に多いです。
どんな効果があるかといいますと、労基署からは何もなければ目立ちませんが、何かあって入られてしまうと違反だと指摘される、とういことです。

それでは、特別条項を自社の残業実態にあわせるのか、または、労基署から目立たないようにするのか、いったいどちらが良いのでしょうか?

私は、自社の残業実態にあわせた方が良いと考えています。
労基署から目立たないみばえの良い36協定にして、何かあったとき違反だと指摘されるより、コンプライアンス重視の方が全然良いと考えています。
*特別条項で月80時間超を設定することは、違法でもなんでもありません。
ただし、今後は、より一層の残業削減の取り組みをしていただき、特別条項で月80時間未満になるよう方向づけていただくとより良いと思います。

一番良いのは、残業ゼロです。
残業ゼロで売上が下がらず業務がまわれば、労使ともに幸せです。
次に良いのは、告示の月45時間・年360時間以内です。
その次に良いのは、特別条項で月60時間以内(大企業での割増賃金率も25%でOK)です。
さらにその次は、可能なかぎり、特別条項で月80時間未満となります。
それでも無理な場合は、自社の実態にあわせた特別条項です。

残業の問題は、政府に言いたいこと、法律と現実の乖離、その他いろいろ解決しなければならないことが山のようにありますが、ひとつひとつ一緒に解決していきましょう。

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【労務トラブル対応の冨島社労士事務所】特定社労士 冨島高志
労働基準監督署からの是正勧告、未払い残業代などの労務トラブル対応専門の社会保険労務士(社労士)です。東京都立川市の社労士事務所です。新定額残業手当制度の導入・就業規則の作成も多数実施しております。
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