電通事件と働く者の尊厳。そして就活。

電通新入社員の過労自殺に端を発した報道が止まりません。

今のところこれら報道で主にフォーカスが当たっているのは「長時間労働」です。実際今回の過労自殺については100時間超の時間外労働が労災認定されたわけですけど、それ以上に問題なのは、36協定違反を免れるために、使用者側で労働時間の過少申告指導していのではないかという疑いが持たれていることです。

実際、労働者側の労働相談を数を多く経験している当職の目から見れば、使用者側の残業の過少申告指導は、電通に限らず世間一般で横行していると言ってよいと思います。

また過小申告指導が行われる様な企業風土の下では、業務を効率化して労働時間を削減できるようにしようという努力よりも、必ず様々な言葉や行動によって、使用者が労働者に現状を受け入れさせようとする圧力が働きます。そしてそれが働く者の尊厳を奪っていくわけです。

長時間労働が労働者に与えるダメージは勿論小さくありません。ただそれ以上に、職場で働く者の尊厳が傷つけられることは、職場が日常の場であるからこそ、急激に労働者の閉塞感、生きづらさを高めていきます。もちろん、過労自殺等の本当の原因は他人からはわからないものです。しかしそうした構造が少なからず影響しているのは想像に難くありません。

採用支援や就活相談も業務の一つとしている当職の場合、毎年、就活シーズンになると様々な形で就活生と接することが多くなります。もちろん「電通に入りたい」という学生も毎年後を絶ちません。

そして例年感じるのは、就活生が様々な夢やビジョンに基づいて就活をして頂くのは大いに結構なのですが、最後に入社する企業を選択する際には、「就活人気企業ランキング」「知名度」「平均年収の高さ」などといったものだけでなく、日常の場としての職場が「働く者の尊厳」をわきまえているか否か重視して欲しいということです。殆ど就活生はこの点に関しては意識が及んでいません。

内定を複数取り、選択肢を多く持つことは良いと思いますし、そのためには就活テクニックも勿論必要でしょう。戦術だって大切です。しかしそれで予定通り優位に就活を展開しても、最後の最後に自分にフィットしない選択をしてしまったら、元も子もありません。

そういう選択にならいない様にするためのリトマス試験紙の様なものが、個々に感じ取り方の差があるでしょうけど、「働く者の尊厳」を重視している環境か否かの判断ではないかと私は思います。

そしてこの判断は最終的には生身の現役社員とのコミュニケーションからしていくしかありませんし、ノウハウを誰かから伝授してもらって済ませられるものではありません。終局的には、自らの「感度」を上げていくしかないでしょう。

新卒採用の場合、はじめて大量の社会人と接するわけですから、その一つ一つの機会を良くも悪しくもトレーニングの場と考え、相手からどれだけ真実の情報を引き出すことができるか、そういう「感度」を高めていく様に心掛ける。そうすると就活の終盤には、ある程度最終的な企業選択の判断軸になるものが自分の中にできている。そういうものではないかと私は思います。

働く者の尊厳を大切にして、テクニックと情報戦のみにはしらない就活を就活生にはして欲しい。また裏返しで言えば、そういうことをベースにした採用活動でないと良い新卒採用はできない。今回の電通事件を通して、就活と採用活動を見直すとその様な景色が見えてくる様に思います。

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尾鼻 則史
大阪・梅田で労働紛争解決(労働者側・使用者側)、労務リスクマネジメント・就業規則作成および改定・採用支援・人事制度策定および改定(使用者側)、労働相談・就活相談(労働者側)を中心に活動する特定社会保険労務士。リクルートグループ出身、ベンチャー・第二創業などの株式公開(IPO)準備企業の管理部門責任者を歴任した豊富な経験を基に、トラブルのない成長力ある組織づくり、働く者が幸せになる職場づくりをミッションとしている。

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