バイト欠勤に法令以上の給料減額をしても返金すれば一件落着?

報道によると

東京武蔵野市にある大手コンビニの加盟店が、風邪でアルバイトを欠勤した女子高校生に対し、法令で認められた以上の給与減額を行ったのを受けて、本部が「労働基準法ではペナルティーでの減額について、賃金総額の10分の1を超えてはならないとしているので返金させた。加盟店の法令に対する認識不足で申し訳ない」としているそうです。

返金そのものは当然

賃金から勝手にペナルティーを控除したのは、賃金全額支払いの原則に反し、賃金債務の一部不履行となるので、返金は当然のことです。〔労働基準法24条1項、民法415条〕

これは、民事的側面についての話です。

返金だけで済まされるのか?

賃金から多額のペナルティーを控除すると、賃金の一部を支払わなかった点と、制限を超えるペナルティーだった点で違法となり、30万円以下の罰金という刑罰が規定されています。〔労働基準法24条1項、91条、120条1号〕

たとえば、コンビニの商品をポケットに入れ、店の外に出て、ある程度店を離れたところで店員に呼び止められたら、この時点で窃盗罪が成立しています。〔刑法235条〕

その場で商品を店員に返しても、犯罪としての窃盗罪は消えません。

このコンビニだって、こうした万引き犯を許さないでしょう。

同様に、今回の事件でも、ペナルティーの返金だけでは済まされないように思います。

ペナルティーの制限規定

ペナルティー(減給制裁)を制限する労働基準法91条は、就業規則の章に含まれています。

このような懲戒処分は、就業規則などに具体的な規定があり、本人の言い分を聞く機会を設けるなど、適正な手続きを経ていないと無効です。

そのコンビニに、ちゃんと就業規則があって周知されていたとしても、本人の言い分を聞く機会を設けずにペナルティーを科したら無効なのです。

つまり、無効なペナルティーを賃金から控除したことになるのです。

代わりを出勤させるルールの有効性

「自分が病欠するときは他の従業員を出勤させる」というのは、まともなルールなのでしょうか。

この高校生は他の従業員に対して出勤を命ずる権限を持っていないでしょうから、そもそも不可能な義務を課していることになります。

不可能な義務に反したらペナルティーというのは、客観的に不合理ですし、世間一般の常識からも外れていますから、代わりを出勤させるルール自体が無効です。

代わりを出勤させることを認めると

ある週に、Aさん、Bさん、Cさんの3人が欠勤し、3人ともSさんに代わりの出勤を頼んだとします。

この場合、Sさんは1週間の法定労働時間を超える勤務となり、残業手当(時間外割増賃金)が発生するでしょう。

このコンビニが、残業手当のことを気にせず、アルバイトにシフトの調整を任せているということは、そもそも残業手当を支払う心配などしていないのでしょうか。

ではどうしたら良いのか

「発注や接客をきちんとするためにシフトに穴を開けたくない」というのが店長の想いでしょう。

それなら、次のようなことを正面から考えるべきです。

・その店で働くことのメリットを強烈にアピールして応募者を増やす。

・退職するアルバイトが後輩を紹介する暗黙のルールを定着させる。

・働き甲斐を与えてやる気を引き出す。(上手にほめるだけでも効果あり)

・人間関係を良くして絆を強くし辞めたくない店にする。

・発注精度を上げる教育・指導のしくみをつくる。

・接客トレーニングのしくみをつくる。

教育は店長自ら行うことだけを考えず、先輩が後輩を指導するしくみをつくるのがコツです。

ここも社労士(社会保険労務士)の出番

とはいえ、「うちの店で具体的にどうしたらいいのか」と迷うところがあれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

それにしても、この店はこれから大丈夫なのでしょうか。せめて適法性を社労士にチェックさせていれば、こんな失敗は無かったと思います。

この投稿は役に立ちましたか? 役に立った 役に立たなかった 0 人中 0 人がこの 投稿 は役に立ったと言っています。
The following two tabs change content below.
解決社労士 柳田 恵一
今のありのままの姿と理想とのギャップをどうやって埋めたら良いのか。「府中柳田」で検索してみてください。そして、お気軽にご連絡ください。