残業手当の要らない管理監督者と単なる役職者の区別基準

<ショッキングな事実>

現在企業で勤務している管理職の大半は、管理監督者ではありません。したがって、時間管理をきちんとして、残業手当や休日出勤手当も支給しなければなりません。

ところが、このことについては世間一般に大きな誤解があります。

最近も、弁当チェーンの店長だった30代の女性が、管理職であることを理由に残業代が支払われなかったのは不当だとして、会社に未払い残業代などを求める訴えを起こしたのに対して、裁判所はこの女性が管理監督者には当たらないとして、会社に約160万円の支払いを命じました。〔平成29年2月17日静岡地裁〕

いわゆる「名ばかり店長」というのは、責任だけが店長クラスで、権限と収入は平社員クラスなのだと思います。

<管理監督者といえるための最低限必要な条件>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

少なくとも、次の3つの条件はすべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

<経営者と一体的な立場で仕事をしていること>

労働者でありながら、経営者の業務を代行する立場にあり、経営者から管理監督、指揮命令について大きな権限を与えられています。他の社員の指示に従ったり、他の社員に決裁を仰ぐ必要があるというのでは、とうてい管理監督者とはいえません。

次のようなケースでは、この基準を満たしません。

・工場長の肩書だけで監督管理権がない

・人事や機密に関与せず経営を左右するような仕事ではない

・人事に関与することがあっても独自の決定権はない

・自部門の社員を統括し、採用にも関与するが、労働条件は経営者が決定する

・社員に対する懲戒処分の権限がない

・顧客とのトラブルについて示談の最終的な権限がない

・意見は言えるものの経営者とともに経営方針を決定する権限がない

<出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと>

管理監督者は、24時間、経営上の判断と対応を求められます。ですから、いつ会社に現れて、いつ去って行くかは、本人の判断に任されています。遅刻や早退によって、給与や賞与が減額されるというのでは、とうてい管理監督者とはいえません。

次のようなケースでは、この基準を満たしません。

・出退勤の時刻が会社に決められている

・タイムカードにより勤怠管理を受けている

(タイムカードを打刻しているだけでチェックを受けないのは良い)

・いつどの仕事をするかの時間配分を任されている

<その地位にふさわしい待遇がなされていること>

給与、賞与その他の待遇で、一般社員がどんなに頑張っても、つまりどんなに残業しても、どんなに高い評価を得ても、追いつけないレベルにあることが必要です。給与についていえば、新卒社員の初任給の4~5倍以上だと思われます。

スタッフ職であっても、他の部門の管理監督者と同等の地位にあり、給与、賞与が支給されるのでなければ、とうてい管理監督者とはいえません。

次のようなケースでは、この基準を満たしません。

・残業手当の多い部下よりも給与が少ない

・評価の高い部下よりも賞与が少ない

・他部署の一般社員よりも給与や賞与が少ないことがある

<名ばかり管理監督者の存在理由>

会社が管理監督者ではない社員を管理監督者扱いする理由は2つ考えられます。

まず、残業手当などをカットして人件費を削ることです。これは違法です。

もう一つは、何か大きな問題が発生したときに、名ばかり管理監督者に責任を押し付けてクビにすることで、その社員の上司が責任を回避できるようにすることです。こんなことをしても、マスコミやネットを通じて顧客や取引先には実態が伝わってしまい、会社の評判が落ちるだけです。

<人件費を削るなら>

次のようなことを推進すべきでしょう。特に、教育がいい加減な会社が目立ちます。たとえば、パソコンの表計算ソフトの使い方が、本人任せになっていて全くレベルアップしない人が多いようです。

・ダラダラとした時間や、なんとなくの休憩時間を解消する

・残業や休日出勤は自己判断ではなく会社からの命令によって行う

・具体的な教育訓練によって生産性を上げる

・能力や貢献度を適正に評価し給与や賞与に反映させる

(同期入社なら同額というのではダメ。できる社員ほどヤル気がなくなる。)

・状況によっては定額残業代を導入し正しく運用する

具体的に何をどうしたら良いのか、迷うところがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

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解決社労士 柳田 恵一
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