宅配便最大手企業が未払いのサービス残業代を支払う理由

<報道によると>

宅配便最大手企業が、数万人の社員を対象に未払い残業代の有無を調べ、すべて支払うことにしたそうです。総額数百億円となる可能性があるとされています。

サービス残業が社内で常態化していることを大手企業が事実上認め、全社的に未払い残業代を精算して支払うのは極めて異例だと報じられています。

<支払うことになったキッカケ>

横浜市の支店が、横浜北労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けました。

この是正勧告というのは、労働基準法などに違反しているので、すぐに改めなさいという行政指導です。行政指導ですから、強制ではないのですが、従わなければ違反行為について逮捕・送検されることもあります。

このときの是正勧告は、休憩を適正にとらせていなかったことと、残業代の一部を支払っていないことについてのものでした。残業代の一部未払いに対する罰則は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金です。〔労働基準法37条〕

ですからこの企業も、当然のこととして、この是正勧告に従って対応しました。

<全社的に対応しない場合のリスク>

横浜市の支店でサービス残業があったということは、他の支店でも同様のケースが見られるかもしれません。

労働基準監督署は、管轄内の支店にしか調査に入れないですし、是正勧告も出せません。そこで、他の支店に対しては、それぞれの支店を管轄する労働基準監督署が調査に入る可能性があります。

この企業は、全国展開していますから、多数の支店に同時期に労働基準監督署の調査が入れば、それだけで大変なダメージとなります。

そして、この企業の本社は東京都中央区銀座にありますから、中央労働基準監督署が本社の調査をすれば、一網打尽となる可能性もあるのです。

 

<全社的な対応のメリット>

多額の未払い残業代をまとめて支払うのは、この企業にとって大きな負担となります。しかし、それは元々支払うべきだったものを支払っただけです。

もしも、横浜市の支店の従業員だけが、過去の残業代をまとめて支払われただけならば、他の支店で働いている人々は不満を感じます。自分が働いている支店を管轄する労働基準監督署に、サービス残業を含めた実態を申告するかもしれません。全国的に速やかに対応することで、こうした事態を防ぐことができます。

そして人材の流出を防ぐこともできますし、むしろライバル企業からの人材獲得を含め、採用がしやすくなることでしょう。

ライバル企業でも、未払い残業代を精算して支払う動きが出てくるでしょうが、体力のない企業は一気に業績が悪化してしまいます。また、残業代を支払い切れない企業からは、人材の流出が加速されるでしょう。業界トップのこの企業は、ますます優位に立てることになります。

<今後予想される展開>

宅配便業界では、過剰なサービスを低料金で提供するのが当たり前の世界になっています。簡単に料金を値上げすることができない状況です。

しかし、今回のことが大々的に報道されることにより、給与の適正な支払いなどを理由として値上げに踏み切るのも容易になります。業界のトップ企業が値上げすれば、ライバル企業も値上げするでしょうから、この企業の競争力は失われません。

結局、この会社だけでなく、業界全体で売上の増加を見込むことができます。

反対に、宅配便利用者の負担は大きくなると思われます。

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「異例」と報じられる大企業の行動も、社労士から見れば「当然」ということもあります。

万一、労働基準監督署などの調査が入ったら、あるいは調査の予告があったら、ピンチをチャンスに変えるためにも、信頼できる社労士にご相談ください。

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解決社労士 柳田 恵一
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