セクハラの基準は客観的 相手の受け取り方次第ではない

殺人未遂事件の場合

ある人が駅のホームで近くにいた人を突き飛ばし、発車直後の電車に接触させ、頭の骨を折るなどの重傷を負わせたという事件が発生します。

目撃者の110番通報で駆けつけた警察官が、殺人未遂容疑で現行犯逮捕します。

たいていは容疑者が酒に酔っていて、「よく覚えていない」などと話します。

「殺すつもりで突き飛ばしました」と話すことは稀なのです。

それでも殺人未遂容疑で逮捕されます。

故意による違い

刑法の規定によれば、容疑者の故意の内容により成立する犯罪は次のように区分されます。

・驚かしてやるつもりだった → 暴行の故意で傷害の結果が生じたので傷害罪

・ケガをさせるつもりだった → 傷害の故意で傷害の結果が生じたので傷害罪

・殺すつもりだった → 殺人の故意で傷害の結果が生じたので殺人未遂罪

そして、容疑者の故意の内容は、現場の状況などから客観的に認定されます。

容疑者にインタビューして「ケガをさせるつもりでした」と答えたら傷害容疑で逮捕し、「殺すつもりでした」と答えたら殺人未遂容疑で逮捕するというわけではありません。

被害者の受けた印象

被害者は、その場の状況から「殺されると思った」と感じることが多いでしょう。

しかし、被害者にインタビューしたら、「大けがをさせられると思った」と言う人もいるでしょうし、かなり鈍感で「驚かそうと思ったのでしょうか」と言う人がいるかもしれません。

しかし、こうした被害者の感想は、直接、成立する犯罪の種類を決定づけるものではありません。

セクハラの成否

セクハラになるかどうかの基準も、殺人未遂の場合と同じように考えられます。

加害者がセクハラ行為を行うつもりだったかどうか、相手がどう感じたかとは関係なくセクハラの成否が決まります。

行為者にセクハラの意識など全く無くてもセクハラになってしまうことがあります。

また、被害者がどんなにセクハラだと思い悩んだとしても、客観的にはセクハラではないことがあります。

セクハラの定義

セクハラの定義として、公には次の2つが挙げられています。

・職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること

・性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること

しかし、セクハラの成否の判断は、客観的に行われる必要がありますから、より明確に示すなら次のようになります。

・職場において一般的な感覚を持った労働者であれば、その意に反すると考えられる性的な言動が行われたと客観的に認定できる場合に、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること

・性的な言動が行われることで、職場の環境が一般人にとって不快なものとなったと客観的に認定できる場合で、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること

さすがに、これでは長すぎますから、通常は前者の定義が用いられるわけです。

会社の対応

セクハラが疑われる事実が発覚した場合、対応にあたる担当者や責任者は、ついつい被害者や加害者の「気持ち」に囚われてしまいます。

しかし、本当に追及すべきは客観的な事実です。あくまでも客観的な事実を基に、セクハラの成否を考えるためです。

こうしないと、電車の中で痴漢を疑われ仕事を失う人と同じように、社内で不当な懲戒が行われる恐れがあります。

また、被害者が救われない恐れもあります。

きちんとした対応のための準備

まず、就業規則などにセクハラの客観的な定義を明示することです。

これと併行して、セクハラについての社員教育をきちんとすることです。

また、セクハラの相談窓口を設けることです。

この相談窓口は、外部の第三者的な立場であることが望ましいのです。

そうでなければ、被害者も加害者も相談しにくいですし、社内の人が担当では客観的に対応できない必然性があります。

就業規則も社員教育も、そして相談窓口も、全部まとめて信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談してはいかがでしょうか。

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解決社労士 柳田 恵一
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