傷害事件でもプライベートで起こしたなら処分は軽いのか

懲戒処分の制限

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法15条〕

会社が「常識」に従って懲戒処分を行ったものの、その具体的な懲戒規定が就業規則などにない場合には、「労働者を懲戒することができる場合」ではないので、懲戒権の濫用となり、懲戒処分が無効となります。

この場合には、懲戒処分の対象とされた労働者から会社に対して、慰謝料その他の損害賠償を請求できることになります。

人手不足で採用難、転職は容易という現状であれば、その労働者は転職したうえで損害賠償を請求してくる可能性が高そうです。

社外での傷害事件の例

社外での傷害事件の例としては、次のようなものが考えられます。

公休日にお酒を飲んで酔った従業員が、他の従業員2人に対し、殴る蹴るなどの暴行を働いて、被害者のうち1人は救急車で運ばれた。

厚生労働省のモデル就業規則には、この場合に適用される規定として次のものがあります。

 

労働者が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とする。

・過失により会社に損害を与えたとき。

 

ある従業員が、酔って他の従業員に暴行を加えケガをさせるという場合、会社に損害を与える故意があるのは稀でしょうから、過失により損害を与えたと評価されるでしょう。ですから、一般にはこの規定が適用されそうです。

 

ちなみに、厚生労働省のモデル就業規則には、犯罪行為について次の懲戒規定があります。

 

労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。

公休日の犯罪行為であれば、プライベートなものであり会社が関与しないとするのでしょう。

もし、会社に損害を与えるようなものであれば、懲戒解雇はできないにしても、「過失により会社に損害を与えたとき」にあたるので、情状に応じ、けん責、減給又は出勤停止とすることはできます。

あくまでも、厚生労働省のモデル就業規則をそのまま適用したらどうなるかという仮定の話です。

※けん責(譴責)= 始末書を提出させ、いましめること

損害は会社によりけり

先ほどの傷害事件の例をもう一度確認しておきます。

公休日にお酒を飲んで酔った従業員が、他の従業員2人に対し、殴る蹴るなどの暴行を働いて、被害者のうち1人は救急車で運ばれた。

これがネットによる小規模な通信販売の会社の従業員によるものだとします。

救急車で運ばれた従業員がしばらく働けないとしたら、それが会社の損害になります。また、暴行を働いた従業員が逮捕され拘束されて働けないのも会社の損害となります。

しかし、大多数の人に知られていないような、社名を聞いてもピンと来ないような会社での話なら、会社の評判が落ちて売上が大幅に減少するということもなさそうです。

ところが、これが全国的に知られた大規模な引越しの専業会社だとすると、まったく事情が変わってきます。

救急車で運ばれなかった被害者の従業員も力仕事はできないでしょうし、それ以上に会社の名に傷が付くことは大打撃になります。

「過失により会社に損害を与えたので始末書を提出します」だけで許されてしまうのは不合理な気もします。

加害者としては、知名度の高い会社で働いているのだから、何か事件を起こせば世間で騒がれて、会社に大きな損害を与えそうだという認識はあるでしょう。

ですから知名度の高い会社ならば、たとえ社外での犯罪行為であっても、場合によっては懲戒解雇もありうるという就業規則にしておく必要を感じます。

ここでもう一度、最初に掲げた条文を確認しましょう。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法15条〕

会社の業種や規模、知名度は「その他の事情」に含まれます。

加害者の行った行為が全く同じであったとしても、懲戒権の濫用とされる範囲は会社によって異なるわけです。

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社の就業規則は、その職場に適合したオリジナルのものでなければなりません。そうでなければ、就業規則は十分な機能が発揮できないからです。

会社を守り成長させる就業規則については、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

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解決社労士 柳田 恵一
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