能力と実績だけの人事考課では人手不足を乗り切れません

人事考課がないのは論外

社内に人事考課の基準がなくて、年齢や経験年数だけで昇給と昇格が決まっている会社からは、将来有望な若者が去っていくものです。

ただクビにならないように気を付けながら、在籍年数を伸ばしていくだけで、それなりの昇給と昇格が期待できるとすれば、危険を冒してまで努力するのはばかばかしくなります。こうして多数派の社員は、本気で業績に貢献しようという意欲を失っていきます。

中には、会社に貢献して会社の事業を成長させれば、自分自身も成長できると信じて努力を続ける社員もいます。これは少数派です。それでも、長年にわたって報われなければ、やがて力尽きてしまいます。

新卒採用でも中途採用でも、入社当初は意欲に燃えています。その時に、「いつかはあの先輩を越えよう」「いや社長を目指そう」と思える会社ならば、新鮮な意欲を持続することができます。

年齢や経験年数だけで昇給と昇格が決まっている会社では、永久に先輩を追い抜くことはできません。まるでアキレスと亀のパラドックスのようです。

こうして有能な社員が去っていき会社に欠員が出ても、ネット上の情報や口コミが邪魔をして応募者が来ないでしょう。

こんなことでは、人手不足クライシスとまで言われている今、会社の存続は難しくなってしまいます。

主観的な人事考課基準も危険

社長や人事権を握っている一部の人が、主観的に判断して社員を評価するのも危険です。

こういう会社では、会社の業績に貢献するよりも、社長や考課権者と仲良くなるほうが出世の近道になってしまいます。反対に社長や考課権者に嫌われたら最後、未来は暗くなりますから、会社から去っていくことになります。

いわゆる「上を見て仕事をする社員」ばかりになりますから、仕事よりも社長に嫌われないように、社長に気に入られるように努力します。

こういう会社では、社長のまわりに社員が集まって雑談する様子が良く見られます。

本当に会社の業績に貢献している社員は、そんなシーンでも黙々と仕事をこなしているものです。

人事考課基準は、具体的で客観的なものにしなければ、社員の努力の方向性が曲がってしまうのです。

何をどれだけしたらどれだけ昇給するのか、どこまでやったら昇格するのか、これが明確であれば社員は言われなくても努力を重ねます。

 

人事考課と給与

給与というのは、今後1年間にどれだけ活躍するかを予測して設定するものです。

そうでなければ、新卒や中途採用では初任給が決まりません。

ベテラン社員であっても、これまでの実績を参考にして、今後1年間にどれだけ活躍するかを予測して設定するものです。

イメージとしては、野球選手の年俸制を思い浮かべると理解しやすいでしょう。

ただ、一般の労働者に年俸制を使うのはメリットが少なく、運用が違法になりがちなのでお勧めできません。その証拠に、厚生労働省のモデル就業規則にも年俸制の規定はありません。

活躍を予測する場合、個人的な能力だけを見るのではなく、社内での協調性や社外との連携具合も評価する必要があります。

会社に社員が集まっているのは、チームプレーによって苦難を乗り越え、大きな成果を出すためです。

目立った個人プレーばかりを高く評価していては、社内の協調性が失われてしまうことになります。

たとえ個人プレーの能力が高くても、チームプレーの能力が低かったり、社外との関係を良好に保つ能力が低かったりすれば、長期にわたって活躍できません。

会社は可能な限り長続きしたいわけですから、社員に対しても長続きできる能力を求めることになります。

社内での協調性や社外との連携具合を見るのに、会社で決められている正しい仕事の仕方や就業規則などの社内ルールを守れるかどうかが、重要な目安となります。

人事考課の前提となる教育訓練

どんなに優れた人材でも、会社に合った正しい仕事の仕方や働く上での社内ルールを知らなければ、その能力を発揮することができません。

会社の常識と、個人の常識とは異なるものですから、会社は会社の常識を社員に教育する必要があります。これを怠っておいて、「常識だろ!」と叫んでも不合理なパワハラと評価されてしまいます。

これほど人手不足で採用難ですから、社員には1.5人分も2人分も活躍してもらわなければなりません。

長時間労働をして倒れては本末転倒ですから、生産性を高めることになります。

その手段としては、教育訓練をおいて他にはないでしょう。会社にぴったり適合したカスタマイズされた教育訓練であることが必要です。

給与を決めるための人事考課は、この教育訓練が前提となります。

会社として、どのようにして欲しいのかを示さずに、評価だけをするのでは、社員は全く納得がいきません。

会社は学校ではありませんが、もし授業をせずに成績表だけを配布する学校があったなら、その存在価値は疑わしいものです。

 

人事考課と賞与

賞与というのは、どれだけ能力があるかとは関係なく、どれだけの実績を上げて会社に貢献したかという結果を評価して設定するものです。

 

たとえば、5月から10月までの実績を評価して12月に冬期賞与を支給し、11月から翌年4月までの実績を評価して7月に夏期賞与を支給するという形になります。

上の例では、新卒採用で4月入社であれば、夏期賞与を支給するための十分な考課期間がありませんから、支給しないか金一封などの名目で一律の支給額にするのが一般です。

中途採用でも、考課期間の途中で入社したのであれば、最初の賞与支給については同様な扱いになるでしょう。

ここで注意したいのは、「結果がすべて」の評価にしないことです。

どれだけ社内外と協力したのか、そのプロセスを含めて評価しなければ、目的のためには手段を選ばない社員ばかりになってしまいます。

このような社員は、働く仲間である上司、同僚、部下を自分の道具として利用することしか考えません。

まともな神経を持った人ならば、こんな職場には耐えられないでしょう。人格的に円満な社員は退職していきます。

また、実績の良し悪しは運に左右されるものです。

何をどのようにしたらその実績が生じたのかというプロセスを重視しなければ、ラッキーで実績が上がった人は多額の賞与をもらい、不運な人の賞与は減額されてしまいます。

これでは、くじ引きで賞与を決めるようなものですから、運の悪かった社員は納得がいきません。

賞与を決定するために個人の実績を評価する場合には、社内ルールに則って正しい手順で成果を上げたのか、個人では対処できない運の良し悪しが関与していなかったかということも、十分に加味する必要があるのです。

人事考課のフィードバック

賞与の支給額は、基本給を基準に会社の業績を反映した支給月数、個人の実績を反映した考課係数を設定して、次のように計算されていれば納得しやすいでしょう。

個人の賞与支給額 = その人の基本給×支給月数×考課係数

これを個人ごとに面談で伝えることをお勧めします。

支給月数が多ければ「会社は経営状況が良い」とわかりますし、考課係数が高ければ「私は高い評価を得ている」とわかります。

支給月数が少なかったり、考課係数が低かったりしても、「次こそは!」という気持ちになります。

このことが、社員ひとり一人のヤル気に結びつくでしょう。

また、連続して考課係数が低い社員は、大いに努力するか会社を去るかの決断を迫られます。これはこれで、効果が期待できると思います。

ここも社労士(社会保険労務士)の出番

何となく決めた賞与額であっても、上の個人の賞与支給額の計算式で逆算すれば、支給月数と効果係数を求めることができます。

これを各社員に示すことで、大きな効果が期待できますからお勧めします。

ところで、その会社に合った人事考課基準の作成、改定、教育、運用は、社労士ではなくてもコンサルタントにもできます。

しかし、就業規則とも連動させ、法令順守を前提とした健全な企業活動を目指すのであれば、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

 

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解決社労士 柳田 恵一
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